⑤信頼感のうえに


オランダは、近年ユニセフによる
「子どもの幸福度ランキング」でいつも上位に入っています。

こどものみならず、こどもを取り巻く、社会情勢や大人の幸福感が、
こどもの幸せにもつながります。

選ぶ自由がある
すべての人が人として、差別されることなく尊重され、
まずありのままを受け入れられる。


自然環境や風土、歴史的なことがらを背景に
育まれたその社会的な気風が、今にここに活きているのだと感じます。

今、日本のこどもたちは、幸せでしょうか?




風通しのよい学校

数年前、DESHIMA Kid'sプロジェクト (こどもSkype交流)に関わってもらった 
アムステルダム在住 松田あゆみさんは、リコーダー奏者であり2児のお母さん。
娘さんの通う学校に係ってくださり、
日本の保育園とSpypeやお手紙でのこども交流が実現しました。

協力 
‘t Japan Cultureel Centrum 西郡 賢さん
レイモンド庄中保育園 平井 亙さん
De Dongeschool 他





こどもたちも身近にいる学友・お友達のバックグランドを知る機会となり
生きた学びが得られます。

物事がスピーディーに決められ、実践できる。
とにかくやってみよう!
やりながら検討して、よいよいところを目指していく。
何より、この企画も先生と親との信頼関係にもとづいてこそなしえたことです。


評価のあり方にも驚きました。
他人と比べて
違うことを良い、悪い、優劣で判断しない。

例えば5段階評価で、1.2であったら、がっかり、ではなく
「あなたはチャンスがある。未だ見ぬ未知の可能性に秘めている
と捉えられます。

そして、自分のペースでよい。無理をさせない。しない。

留年や転校もよくある話。
「百の学校があれば百の教育」があると認められています。

また、できないことにフォーカスするのではなく
できることにフォーカスする。

大人はこどもを信じる。
信じることがこどもたちの心の安定、安心につながり主体性が育つ。

安心できる環境があるからこそ
いっぱい失敗しながら、いっぱい学ぶことができる。
だから人が育つ。

人間の発達・発育、子育て、家庭や社会での
人間関係を育むうえでもとても大事なことが詰まっています。

こんな社会があったんだ!と本当に驚きました。
それとともに、私が日本で受けてきた教育って何だったんだろう。
とやはりがっかりもしました。

 


幸福感と学力の両立を実現したオランダ

自立した責任のとれる人材を育てる。
「個別指導」、「自立学習」、「共同学習」が重視され、
子どもの自由や個々人の発達を尊重した人材育成が行われています。

こうした学習は、こども大人のみならず、
一生涯、すべての人の学び方、どこにいっても通じるものです。

こども、大人を区別することなく、
ひとりの人間・個人として捉える。とてもオランダらしいところです。

勉強は学校で、放課後は、しっかり遊ぶ。
地域の児童館のようなところで、美術や音楽、また様々なスポーツに励むことができます。
お金もさほどかかりません。
お家では家族との時間。生活にメリハリがあります。

家族とともに過ごす時間を大切にできる。

親は子育て中でも働きやすい。
バリエーション豊富な働き方ができるワークシェアリングが背景にあります。
一人当たりの労働時間を減らし
仕事を分け合うことで雇用確保を目指す「ワークシェアリング」
正社員と同じ待遇の短時間勤務労働者を増やす取組みです。

親子のコミュニケーション
オープンに話のできる気風がある。大人もこどもも同様に。
大人だから正しい、正しくあらねばという感じではなく、
すべての人は学び人。成長過程。
良い悪いではなく、個々の意見と考え方。
個人が尊重される価値観からこそなしえることです。


未来への指針

これからの社会をどうしていきたいか?
どんな人材を未来に育てていきたいか?
そこに必要な教育、また社会的な制度が施されている意思を強く感じます。

今、必要な学びは?
教育も、時代の流れに沿い、柔軟であるべきた。と問われているようです。
時事問題を授業で扱ったり、最新のテクロノジーにも気軽に触れられたり
今の政府はどう?首相の発言についてどう思う?
国際問題〇〇で起こっていることはどう思う?
など、社会で起こっていることについての遠慮なく、
意見交換のできる時間もあるそうです。





比較的規模の大きな取り組みとしては、
こんなイベントも

●テクノロジーとサイエンスのフェスティバル
企業の研究所や大学、各種機関や施設、美術館など
テクノロジーとサイエンスのバックステージが一般市民に開かれます。

Weekend of the Science
http://www.hetweekendvandewetenschap.nl/


しかし、このようにテクノロジー優勢かと思えば・・・

アムステルダムには
動物が飼育されている、小さな施設が街中にあります。
こどもたちが身近に動物に触れる機会を提供するために。

人々と暮らしをともにしてきた動物たちが飼育されています。
ヤギや鶏、ひつじなど。動物園のように、キリンやゾウはいません。






学校には施設がなくても街中にあれば、
こどものみならずそこに暮らす地域の人々も、ともに楽しむことができます。
交流の場にもなります。

そして公園、運河、水辺には、たくさんの鳥たちに出会えます。
生き物の声や音が響きます。
公園といっても、華美に整備されてなく看板のみ、
本当に自然のままのところもありびっくりしたこともあります。

都会でありながら、自然や野性に溢れる動物を身近に感じられる街って素敵です。

動物に関する考え方にも驚きました。
鳥が窓ガラスに追突したら、動物のための救急車がきてくれる。
ボランティアによる活動ということです。

また、放し飼いにしない鶏は、鶏の生きる権利を侵害する。
スーパーでも、動物がどう飼育されて育った肉か卵かがわかるようになっているところもある。
パンを残したら、鳥にえさをあげる。
動物党という政党もあるそうです。

動物も人間の暮らしとともにあることは当たり前。
生きることに尊厳があるという心持ちのあらわれで、
素晴らしい考え方だと思います。


シェアすること




マンション裏の中庭です。
その昔、港から航海へ出る夫たちの寂しさを癒すために集合中庭が
作られ、お花に囲まれ女性たちが癒されていたそうです。
今でも、その名残。中庭を住人でシェアしているところがあります。
合理的でみんなが喜べるのであれば、シェアすることをいとわない。

また、タクシー乗り場でも相乗りの声掛けは、日常茶飯事。
ユーズド、アンティーク、新しいものがいつもよいわけではない。
なんでもオリジナル、他人が使っていたものでも
あっという間に、自分のものに作り変えてしまう才能とDIY精神。

個と他とのボーダーライン、距離の取り方、
微妙な身体感覚、バランス感覚も、とても興味深いところです。


このように、オランダは、多様な民族、背景を持つ人々を受け入れてきた社会、
その結果、もちろん、見直していかなければならないところも
たくさんあるようですが、今の日本からみれば、学ぶべきところがいっぱいあります。

役立つことは、大いに参考に!
また、他を知ることで自らの根っこにあるものを見直す、
再発見できる機会にもなります。

違うからこその面白さと学び。
自己責任。
信頼の上になりたつ社会と人間関係。





「さぁ、どうぞ自由にあなたの才能を披露してください。」

「劇場的社会」舞台づくりがとっても上手なオランダ。

駅に設置されたこのピアノがこの社会を物語っているように思えました。

あなたの音色を奏でてください。


(byこどもアートかとうゆみ)

This entry was posted on 2016-12-10 and is filed under . You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0. You can leave a response.

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