Archive for 11月 2017

移民と文化の共生 THEATERSCHOOL in Nederland

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昨今、移民受け入れの本格検討が進められている日本、
そして、多くの外国人観光客の訪れなど、速度を増して、
私たちの暮らしやコミュニティにも変化が求められているように感じます。

オランダ・デンハーグにあるOnzewereld THEATERSCHOOL、
多様な民族・文化・宗教的、背景を持つ、37ものナショナリティを持つ、
こどもたちが通う公立の小学校に併設されているシアタースクールです。

6年前からはじまり、オランダの新しい文化に触れる経験、相互理解、
多様な背景を持つ人々どうしがどのように社会の中で共生していけるのか、
現代的なアートをツールとしてその可能性を探る試みがなされている実験校。

https://www.facebook.com/OnzeWereld/
XL-Talent op Basisschool Onze Wereld
http://www.onzewereld.net/




私たちは、このオランダの現場、事例を通して、
移民と文化の共生についての学びを広げられたらと思い、
シアタースクールのディレクターのGer Van Dijke(作曲家)さんと
Exchangeのプログラムを検討しよう!ということになりました。


このシアタースクール、創設当初は、少人数でスタートしたそうです。
今では大人気、しかし受け入れ人数が限られ、
毎年9月にオーディションを設け、週4回放課後に約60人のこどもたちが、
グループに分かれ多彩な演劇体験をしています。

ステージ、照明、音響機器など、プログラムの内容は、本格的。
先生たちは、作曲家、ダンス、ドラマなどの専門家、3名体制。

ディレクターのGer Van Dijke(作曲家)さん。
こどもたちと一緒に舞台や音楽をつくったりするスペシャリスト。総監督。
タマラさん ダンスや演技・振付指導。
テオさん テクニカル(記録・編集など)な部分を担う。

制作~練習~本番まで。年に2回、発表会が行われています。






今回、‘2017年1月~3月までの約3ヶ月、6月の2週間。
exchangeプログラムのためのリサーチに手をあげてくれたアーティスト
 市川まやさんのインタビュー、振り返りを少々ご紹介します。

多様な民族のこどもたちに、世界のコテンポラリーアート?!
予測不可能な現場で何が起こったのでしょうか。




(写真提供:まやさんの欧州滞在 in ベルギー)


まやさん:

「もうこなくていいよ。」

突然、こんなメールが届きました!

オーディション~練習~本番まで、約6カ月間、
このシアタースクールで経験を積む意気込みで現場に飛び込んだはずなのに。

「なぜここにいるんだろう?」

「なぜ、何のフォローもないんだろう?」

オランダ語がわからない。現場で何をしてよいのかわからない。私の役割は一体何だろう?
私が登校拒否になるくらいまで落ち込み、日々苦しくなっていたころの出来事でした。

こどもたちの本番までの全てのプロセスを、見届けたかった。
怒りと悔しさと、情けなさ。途方に暮れた瞬間でした。

ついに、この学校での経験は、3ヶ月ほどで終わってしまいました。



 

こどもたちは、オーディションを経て、A・Bの2つのグループに分けられ、
6ヶ月後の本番に向け、それぞれ演劇に取り組んでいました。

Aグループ⇒月・木 まったく演劇素人 こどもたち同士の仲がよい。遊びで盛り上がる。
Bグループ⇒火・金 このシアタースクールを以前に経験したことのあるこどもたちがいる。

 今回は、この2つのグループ間に特徴があり、演劇レベルにも大きな差があったようです。
Aグループの仕上がり具体があまり芳しくなく、
ディレクターのGerさんは、テコ入れをしないといけない!発表の時期までになんとかしなくては。
現場の焦り、ささやかな緊張感もあり、待ったなしのこどもの現場。
こどもたちをまとめるのに精いっぱいの様子でした。

やがて、Gerさん、タマラさん、スタッフ同士の会話は、だんだんと英語からオランダ語一色に。
私への説明は、事後報告のみ。スタッフ同士の会話に参加できなくなってしまいました。
フォローなどは、ありません。こちらから、アクションを起こさないと何も無。
みなさん、それぞれ学校以外の生活も忙しそうで。







まやさん:

私が学校に通いはじめた2017年1月は、
こどもたちは、2016年9月のオーディション~前期パフォーマンス(9月-12月)冬休みを経て後期に入っていました。はじめは、台本なしのウォーミングアップ、それはおもに遊びの時間でした。

私は、この時期にワークショップをする機会をもらいました。
日本的な視点でちょっと雰囲気の違うものを提案してみたく、
場がシーンとするような、『静の時間をつくる』導入を試みました。
しかし、こどもたちは、全く聞いてくれなくて、「静」どころか大騒ぎ、大失敗!!
切り替えをして、日本のラジオ体操を紹介したら、
「もっとポップな曲を」と提案され、別の日の違うグループにはなんとか受け入れられました。
日本人的な感覚は、まったく通用しません。

私のやりたいことをもっと思い切りやりたかった。
しかし、練り上げるまでの機会は、もらえませんでした。

このシアタースクールはどちらかというと目標達成型。
発表会を目標に、厳しいけれど、何とかそれを乗り越え、舞台でスポットライトを浴びる。
文化的な経験をすることを目的とする。
成長や成果を見える形で提示・発信する。
トレーニング的、「ピイッーー」笛を使って、こどもたちをまとめるシーンには、驚きました!

 もちろん、指導者の方もアーティストとして活動されているので、
その限られた時間の中でどのようにこどもたちの自由な表現を導けるか、
配慮は感じましたが、そこまでのゆとりはなさそうでした。

私は、自由に表現する歓びや心と身体の爽快感、アートをツールに思いを発散する。
それぞれが心から楽しみダンスをする瞬間。
こういうところも大事にしたいなとあらためて思いました。





どこをゴールにするか?



①    こどもでもこんなにできる!達成感と自信。大人の見方が変わる。
テオさんの記録や編集の演出がさらに輪をかける。成長・成果が見える形である。

②    なんでもありのアート 表現の自由、受容の感覚。
成果は見える形ではわかりにくい内なる部分。

わたしは、この両方を携え活動されている日本在住のダンサー北村成美さんを、
ここにぜひ紹介したいと思いました。
教育現場での理想と現実。どこでも変わらない課題なのかもしれません。




さて、1ヶ月すると今度は台本が用意され、練習がはじまりました。
オランダ語の台本。こどもたちはおおよそオランダ語がわかります。
年齢の違うこどもたちが交じり合っています。

 私は、友人にオランダ語のレッスンを受けながら、台本を翻訳し、練習に臨みました。
単語や発音が難しく、なかなか現場についていけません。
スタッフとこどもたちと練習に集中力が高まるにつれ、
どこでどう振る舞ってよいのか?どこにいたらよいのか?
中途半端に手を出すのも、、、こどもたちの意識が散漫に。
何をしてこの場にいてよいのかわからない。

なんでもよいので、せめて何か役割を作ってもらえたら。
雑用係でもなんでも。飛び入り参加の私の活用方法を、考えてください。
と積極的に意見できていたらよかったのかも。

でも、これは今だから言えることです。
私はしだいに居場所を失っていきました。

廻りのスタッフ・大人の顔色を伺うという、自分の臆病さにも出会うことになりました。
結局、お互いに腹を割って話ができないまま、この学校での活動は、終わってしまいました。

最後、本番直前(パフォーマンス前の週とパフォーマンス(5日間で全10回!!)の週)には、
参加できましたがその間のプロセスが全く見る事ができず非常に残念でした。






オランダの小学校にあるシアタースクールに行ける。夢のような話。
オランダらしく気軽に受け入れてくれたけれども、現実はとても厳しかった。
日常の中に入っていこうとすると言葉は必須。
まして、こどもの現場。何が起こるかわからない。

私には、ダンス・パフォーマンスがある。言葉の壁は超えられる?
超えられなかった無念の想いが、ますますその情熱を掻き立てることにつながりました。

 はじめは相手や環境を攻める気持ちが募りました。
それは、次第に自らを見直す、問う機会に変化していきました。

問題は、言葉の壁だけではないのかも?

結果として、exchangeを進めるにあたっての配慮のポイントがあらわになり、
大きな成果になったと今は思います。




かとう:ディレクターGerさんのメッセージは?

まやさん:

こどもたちを良く観察している。
一人一人の良さを引き出すきっかけを与えている。
ある男の子が、幅広い音域の声をもっていました。それに目をつけ、上手くそれを掬い上げ役割を作り出す。こどもたちに演劇の経験を提供したい。みんなで感動できる瞬間を。
Gerさんの存在からは、そのメッセージをしみじみと感じました。


かとう:その他、印象的なことは?

まやさん:

この学校は多様です。
「何か変!?どんどんこどもが萎れていく」
いつも歌も踊りも本当に上手で、イキイキ輝いて主役をこなす8歳の女の子。
この時は、ラマダンの時期(陽が落ちるまでは飲食をしない、1ヶ月)で、
彼女もそれを行っていたのです!
心配になり思わず近くのお店でお水と栄養ドリンクを買に走りました。

ラマダンとは?よくわからなかったので、アラブ系の店員さんに尋ねてみると「お水も栄養ドリンクもたぶんNGよ」。迷ったあげく、結局渡すことを控えてしまいました。

オランダの春から夏は、陽が長い。陽が落ちるのは夜の時間。
こどもたちが寝る時間。そんな直前にしか食事ができない。
いつも、こういうことは学校で問題だそうです。
ラマダンの時期、こどもたちは何も集中できないそうです。
家庭により在り方が随分違うそうですが、こどもにとっては過酷な様子。

しかし、本番、女の子は主役をなんとかやりきりました。
こんな出来事に触れるのははじめてで、宗教の違いに驚きました。

それから、太っているこどもが目立ちました。
屈伸運動ができないのです。
いつでもスナック、ジュースを食べてよい。好きな時に食べられる。
我慢や辛抱するというのは、日本の誇るべきところだと痛感しました。







そして、いよいよ本番の日。
私は、後半の練習部分には参加できませんでしたが、鑑賞に出向きました。
劇場という特別な場所、舞台。当日は照明が入ることで雰囲気ががらりと変わります。
緊張感も高まり、ここはまさに聖域。そこで踊れるというステータス。
人生のステージに、スポットライトが当たる。
みんなが憧れ、この活動が人気となるのもわかります!

そんな現場ですが、おしゃべりしたり、ざわざわ動いたり。
大人が、鑑賞する姿勢が問題だと感じました。
親自身がグローバルな文化的生活に距離があるかもしれない。
異文化が共生、融合していくことは、本当にとても時間がかかることだと思いました。


かとう:今度があるならば、

まやさん:

先生である、Gerさん、タマラさん、学校以外他の現場で何をしているか見てみたいです。
まやちゃんコーナーを持って、こどもからオランダ語を教わってみたい。
自分もこどもになって一緒に遊んじゃえ~!



(写真提供:まやさんの欧州滞在よりin オランダ)


 かとう:

市川まやさんは、exchangeのためのリサーチ、
日本人初、このシアタースクールの現場に飛び込み、
体当たりでいろんな経験をしてくれました。

exchangeをどう進めたら双方が有意義な経験ができるか?
こどもの現場に、外部のものが入る意味、役割、時間、内容、
現場の性質、習慣など。あらゆる要素を考慮し、exchangeという化学反応を期待する。
オランダ的なの気安さと無頓着さ、日本的なお人よしさ、思いやり。
諸々の条件を考慮し、施行錯誤しながらより有意義なカタチを目指します。

学生生活を終え、働きはじめると、なかなか時間を取るのが難しい。
渡航となればさらに。でも学びたい。世界をひろげたい。
短時間の中でいかに有意義な時間をともに共有できるか?相性もあります。
どんなことがあっても何か得てくる!という強い意志も必要ですね。

『自己責任』
オランダに触れ、よく感じることです。
自分で選んだものに責任を持つ。自分次第。
その能力が顕著に問われる機会でもありました。

 「Hey! You can come anytime 」
「Why not?」
あとはあなた次第。特別なお世話はしませんよ!

まさに、オランダらしい自主学習。
『自分から学んでいく!』

過剰にお世話されることに慣れ過ぎた社会、教育システムや暮らしにおいて
はたと気づかされることがたくさんあります。

市川まやさんは、世界中、どこでも臆することなく、身一つで飛んで行き、踊っています。
何があってもポジティブに。世界中の人々と関係を築き、育み、輪を広げていく。
大きな宿題をかって答えを探し求めていく。

そんなプロセスこそは、まやさんの情熱を掻き立て、
清々しいオーラを発するダンスの肥やしになっているのかなと感じました。



(写真:最後にシアタースクールでもらった花束)


次は、Gerさんこそが、日本と何かしたい。自らも学びたいと。
まやさんの到来により、ますます日本との心理的な距離が近くなり、
その気持ちが高まったようです。
ベテランGerさんの心を動かしました!

キャリアを積むと、なかなか初心に還ることが難しくなります。
異なる文化に出会うExchangeは、ピュアな気持ちが刺激されます。

メリーゴーランドより、ジェットコースターへ!
『案ずるより産むが易し』
 どうなるかわからないという現場に飛び込む勇気、自分が変わる、変わらされる。
言い訳に目をつぶったら、
想像以上の何かに出会えるかもしれません。

どんな現場に於いても、遊びながら学ぶ力!
これこそが、こどもに学ぶ、asonabiの力。





今回のようなリサーチ結果を活かし、Exchange発展に繋げていきます。

市川まやさん、本当にありがとうございました。


『移民と文化の共生』
多様なナショナリティの人々と、どう暮らしていくか?
世界中、たくさんの課題がつまっています。

オランダの取り組みを覗きにいってみませんか。
一緒に学ぶメンバーも募集しています。
NPO法人こどもアートまでお気軽にお問合せください。

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◎‘asonabi’ exchange
Onzewereld THEATERSCHOOL

1、インターシッププログラム 対象:おとな

(ⅰ)現地のシアタースクールで行われていることを学ぶ、体験する
   こどもたちへ、演出・製作、振付をつくる方法やスキル
   こどもにコテンポラリーダンスを教える方法 
   「現代アートとコミュニティ・多文化共生」に関する学び

(ⅱ)現地のシアタースクールの先生とチームになって
   一緒にプログラムを作る~教える ※経験者

(ⅲ)シアタースクール全体の内容、運営のしくみを学ぶ

※講師陣 
音楽、ダンス、ドラマ3名体制でこどもたちを指揮している。

【募集内容】
時 期:①9月~12月の2週目まで
     ②1月~5月末まで
     ※こどもたちのオーディションは9月1週目
     ①②は違う内容のプログラムです。

日 数:最低2週間(8日間)~
※シアタースクール開催日は月、火、木、金。15:15-4:30 
(通常の学校は月ー金、8:30-15:00)

対 象:多文化、芸術教育に関心のある方、すでに何かしらの芸術活動をされている方。

条 件:日常会話程度の英語力。
     体験レポートの提出をお願いします。(日・英)

費 用:プログラムエントリー費 ※NPOへの入会金+会費 
     実費 滞在・生活費+交通費(航空券・現地交通費)
     その他、諸経費(現場の内容により詳細が決まります。)

2、こども交流 対象:こども
アートを通した国際交流から、さまざまな世界、文化、現代的な芸術に触れる機会を提供する。

交流の内容は、双方の希望、可能な事項により随時決定していく。
方法は、Skypeなど簡単な通信機器を通して可能なことから始めます。

条 件:Skypeなどのインターネット環境があること
    英語を話せる方がいること
    すでにシアター・ダンス・音楽活動等を行っていることもしくは関心があること。
    レポートの提出をお願いします。(日・英)

対 象:8歳~12歳まで位。10名~20名程度のグループ単位での交流が望ましい。
     内容によっては、対象外でも相談可能。

費 用:プログラムエントリー費 ※NPOへの入会金+会費  
諸経費(交流の内容により詳細が決まります。)

現地学校情報 Onzewereld THEATERSCHOOL http://www.onzewereld.net/
          Brandtstraat 87 (groep 1 t/m 4) 2572 CC Den Haag
          Director  Ger Van Dijke氏(作曲家)


◆上記企画についての詳細は、
 お気軽にお問合せください。

NPO法人こどもアート
info@asonabi.com 


以上

(byこどもアートかとう)